Topics | 27th June.2004 神奈鍼学術講習会を受講してきました。〜筑波大学 宮本俊和先生〜 レポート:長谷川 尚哉 |
〜宮本先生の熱心な指導に感激〜 |
今回のテーマは「肩関節のスポーツ外傷・障害」となっていました。肩関節は様々なスポーツ(うちの治療院では競輪、野球、水泳、陸上、テニス、バドミントン、最近では拳法、キックボクシングなどの選手を拝見しています)で酷使され、外傷・障害を受けやすい部位でもあります。その外傷、障害がどのような機序で起こるのか?というところからその障害への対処の仕方、実際の鍼治療の実技まで実に幅広い内容となりました。レポートしてみましょう。 〜スポーツ障害はコンタクトスポーツ、オーバーヘッド、オーバーユースで発生〜 |
先生の今回の講義で際立ったのは基本となる骨格、筋、神経に関わる基本である解剖学的理解をふまえ、その先の障害へ話を進めて行かれたことだと思います。解剖学では正常解剖学、つまり「壊れていない状態」を知り、その部位がどのような刺激で、どのように傷害されるのか?をしっかりと話されたことがうれしかった。ともすれば「で?どういう治療をすればいいの?」と聞きかねない先生もいらっしゃるのです。その前に、国家試験の前に行ったであろう解剖学の復習を取り入れて下さいました。ありがとうございました。 さて、肩関節は非常に運動性の高い関節です。屈曲、伸展、内転、外転、内旋、外旋をこなしますね。それだけ複雑な運動を行うために肩甲骨肩関節関節窩は非常に小さく、線維性の関節唇が脱臼を防いでいます。さらにその外側には「回旋筋腱板」と呼ばれる筋腱が上腕骨を包み込むように保持し、関節の脱臼を防いでいます。さらに上腕骨の外転時には肩甲骨肩峰との擦れを防ぐために肩峰下滑液包を持ち、自由な上肢の運動を支えています。これらのどこが壊れても問題が起きそう。 |
先生は豊富なスライドを用い、また骨格標本を手に会場内をまわり、その仕組みを詳細に解説して下さいました。骨格、靱帯組織のレクチャーが終わった後に今度は筋系の説明が。筋系の説明では肩関節を動かす筋の位置、作用、支配神経についてリストし、それぞれを説明。ここではボクの身体を使い(恥ずかしかったが)様々な肢位で詳細に説明されました。そしてそれらの障害がどのような運動で、どこが問題となり発生するのか?というところまでを解説されました。野球でいえばオーバースロー、テニスでいえばサービス、水泳でいえばクロールのプル動作ですね。この様な外転90度を超えた肢位での動作の繰り返しが障害の発生機序となる訳です。 |
障害は簡単には「野球肩」「水泳肩」などという診断名となりますが、実はそれぞれインビンジメント症候群、腱板損傷、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎などの病態が個人個人で異なったかたちで発生している・・・それらを見極めなければならないというわけです。これは僕らは普通に行っていることですが、「どんな運動動作で?」「どの部分に?」発生しているのかを考え、施術の対象としなければまったく意味がないばかりか増悪させてしまうことすらある、ということ。そのために医療機関でしっかりと画像診断を行う必要もありますよ、ということです。 |
上の写真も左の写真もモデルはボク。先生のご説明のお役に立て幸いでした。この様に肩まわりの筋、骨格、神経支配まで解説をして頂きました。続いて実際の臨床施術をご教授頂きました。肩まわりの症状では棘下筋、棘状筋、大円筋、小円筋、上腕二頭筋などが愁訴部位となりますが、先生の施術ではEAT(低周波鍼通電)が中心となっているようです。これはボクの母校でも同じ方法で学びました。今でも同じなのですね。ベーシックな処方です。しかし、筋の走向をしっかりと理解し、該当筋に通電できなければ意味がありません。うちの治療院の得意種目とでもいいましょうか。もちろん他の方法もとりますが。 |
|
その他にアイシング、徒手テスト、野球肩の発生メカニズムなどもお教え頂き、盛況のうちに終了しました。先生ありがとうございました。終了後にお名刺交換をしてきましたが、ボクは先生のお弟子さんの教え子にあたるわけで、宮本先生は懐かしそうにしておられました。次にはもっと様々なアスリート達の愁訴像を対象にお教え頂きたいと思います。 以上(2004/7/26作成) ※禁複製、禁配布お願い致します。 |
"Copyright(C) Therapist Guild Japan." |