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   クレイ講習会について       

文京シビックセンターにて  第1回 7月7日(水)午前10時〜午後3時30分

              第2回 7月28日(水)午前10時〜午後3時30分

レポート:長谷川 冴子

〜ドミニックさんのクレイ講座を受講しました〜
7月7日(水)株式会社ナチュールヴィバン主催によるクレイ講習会が文京シビックセンターにて行われた。 講師には前原ドミニック先生が迎えられた。前原ドミニック先生は大阪府高槻市にてご活躍されており、アロマテラピー、クレイテラピーの施術を行っている。先生はクレイについて「なぜ現在、使用されているのか?に興味がある」とのこと。そもそも先生は18才の時に初めて、フランスで断食療法やホメオパシー、クレイテラピーを使い治療されているヴィヴィ二先生のクレイを使った治療をうけたそうだ。フランスではクレイテラピーは自然療法として浸透しているが、日本においては美容として用いられていることが多い。

 クレイについては「鉱物学」の分野を学んでみる必要がある、とのこと。 講習会で使用したクレイはargiletz(アルジレツ)社の製品。40年前からクレイを供給し続け、保存剤を含まず、国際規格(ISO)に基づいて製造、検査を行っていて合成添加物などは含まれていないそうだ。また、パッケージには成分表がかかれており、2度の分析がされているらしい。

写真1)モンモリオンの町並み

お皿に取ったグリーンクレイ

水を入れて15分ぐらい・・・

混ぜる作業に入る。

 グリーンクレイと呼ばれるクレイはグリーンイライトともいわれている。イライト(Illite)とは粘土鉱物の種類の1つであり、他にもカオリン族のカオリナイト(Kaorinite:)、スメクタイト族のモンモリオナイト(Montmorillonite)などがアルジレツ社の製品に含まれている。イライトと名称がついていても100%イライトというわけではなく、グリーンクレイの場合イライト85%、カオリナイト5〜7%、モンモリオナイト3%含まれている。粘土鉱物は構造、化学組成から色々と分類されているが、これらの名称は発見された場所、分析された場所に由来しているそう。イライトはアメリカのイリノイ州(Illinois)で発見され分析された。調べによると、モンモリオナイトはフランス南東部Vienne(ビエンヌ)のMontmorillon(写真)にちなみ、Damour and Salvetat(1847)が名付けたのが始まりのようだ。その後Ross等(1926〜1945)による研究により、モンモリオナイトは粘土鉱物グループの一つとして確立した。 またカオリンは、17世紀の初め、中国江西省の景徳鎮にやって来たフランスの宣教師が、この珍しい土を発見し、その土を一部、本国に持ち帰り、研究した。後にフランスの陶磁器会社がこの土を「カオリン」と命名した。磁器が世界に広まるにつれ、その原料である「高嶺土、高嶺(Kaoling※)に由来」すなわち「カオリン」は、世界に通用する言葉となったらしい。

中国江西省景徳鎮産陶器の原料産地友好親善大使・矢島常光 Yajima Tsunemitsuさんの旅行記,景徳鎮・旅日記『No.2 』 カオリンの故郷に詳しいので参考にして下さい。

第1日目はグリーンクレイ、レッドクレイの使用法についての講習が行われた。

 まず初めに皿、割り箸が用意された。皿にグリーンクレイを大さじ2杯(30ml)いれ、そこに水(精製水が好ましい)小さじ4(20ml)を回し入れる。このときの注意として、器やスプーンは金属を使用しないこと。陶器、ガラスなどが良く、スプーンは竹なども良いそうだ。クレイに水を入れたら触らずにそのままおいておくこと。すぐに混ぜるとダマになってしまう。実際にドミニック先生が水をいれた直後、かき混ぜダマになったものをみせて下さった。さて、クレイに混ぜる水の量だが日本では季節によって違ってくるらしい。湿度の高い日には水は少なくて良く、クレイの保存は湿度を避けるように、ガラス瓶などに封をしておくとよい。15分程経過したのちに混ぜる作業に入っていく。今回は割り箸だが、ドミニック先生の教室ではつまようじを3本使い混ぜているとのこと。ダマにならないように混ぜたものを体の一部に塗っていく。普通のパックでは薄く伸ばして数分おき、剥がすが、クレイはなんと、0.5cmから2cmの厚さに塗っていく。その状態のまま15分おく。クレイは乾いてしまうと効果がなくなるそうなので、半乾きの状態で水で落としていく。そのためにも厚めに塗っていく必要があるそうだ。クレイを落としながら自身でマッサージしていくとよいとのこと。グリーンクレイは、クレイの中で一番吸収性、吸着性が強く、フランスでは医療的によく用いられているそうだ。

 15分以上おいたクレイをウェットティッシュでふき取ると、しっとりとして他の部分と比較すると皮膚の色が薄くなっているように感じられた。

 グリーンクレイはお肌のパックのほかにヘアパック、ハンドケアまた傷口にも使用できるとのこと。後述するが、コートジボアールにはクレイを使用しながら治療をおこなっているところがある。そこではグリーンクレイが使用されている。

 休憩をはさみ、レッドクレイについての講義がはじまった。

レッドクレイ、レッドイライトともよばれ、イライト80%、カオリナイト12%の割合である。鉄分を多く含むため、血行を良くするといわれている。クレイバスに使用するそうだ。風呂水200mlに対し40〜50gが望ましいとされる。頻度として週に1回程度が好ましいとされ、浴槽に浸かる時間は最長でも、1時間程度とし、使用後は、シャワーでよく洗い流す。クレイバスとしての使い方の他にもヘアパックとしても使用される。また、レッドクレイは乾燥肌の方のパックにも適するとのこと。講義のなかではレッドクレイ(大2)水(小2と1/2)の割合で使用した。わたしは手の甲にクレイをのせてみたが15分後にふき取ってみたところ、うっすらと赤色が皮膚に残っている感じがした。
 最後に質問の時間が設けられ和気藹々とした雰囲気の中で第1回目の講義が終了した。


配付されたクレイの色を比較することにした。上段左から、イエロークレイ、ホワイトクレイ、ピンククレイ、下段左から、モンモリオナイト、レッドクレイ、グリーンクレイである。このそれぞれに 先ほどかいた個別の粘土成分がそれぞれ含まれているとのことである。アルジレツ社では製品に成分のミネラル比率を明記し、利用者に注意を促している。クレイの様々な知識が深まれば、それぞれを好みの比率にミックスしてみたりすることも出来そうだ。私自身はまだミックスしたものを試してはいないが、個人的にはグリーンクレイでフェイスパックをした後、肌が白くなるような感じがして、気に入っている。これからその他のクレイにも触れてみたいと思う。

 クレイには、吸着性、吸収性、イオン交換性があるというが、一体どういうものなのか。理解しづらいので調べることにした。

 まず、吸着性。吸着とは、「吸い付くこと。」「二つの相の構成成分の界面における濃度が、その相の内部における濃度と異なった状態で平衡に達すること。界面で濃度が大きくなるときを正吸着、小さくなるときを負吸着といい、吸着現象の多くは正吸着である。」わかったようなわからないような……。固体と溶液で考えた場合、「溶液の成分が固体表面に濃集し、反対にその成分が溶液中から取り除かれる過程」とも書かれている。つまりは、クレイを使用することにより、クレイが何かを吸い付ける性質をもっているというわけである。簡単にいってはみたものの仕組みがよくわからない。さらに調べてみると粘土鉱物の表面は帯電しているので、物質の吸着が可能であるらしい。それらのクレイの性質からパックなどにより皮脂、老廃物を吸着できるのではないかと思われる。

 次に吸収性。無機物については、「電磁波や粒子線が物質中を通過するとき、エネルギーや粒子が物質に取り込まれ、その強度や粒子数が減少すること」とあり、有機物については「生体が細胞膜などの膜状物を通して物質を内部にとりいれること」などと書かれている。つまり、クレイ自体の「吸収性」は電磁波、粒子線などのエネルギーを吸収するということであり、クレイを肌につけることによって、クレイの吸収性が発揮されるというわけではない。しかし、生体膜を持っている私たちは、クレイのミネラルを体内に「吸収」するというわけであろう。それにより、皮膚側の不足しがちなミネラルを補給し、皮膚の正常な代謝を促すということがいえそうだ。

 次にイオン交換性。粘土鉱物の表面は、負または、正の電荷を持っていて、その電荷と反対符号をもつ陽イオンの吸着が起こるそうだ。吸着イオンをもった粘土鉱物が異種イオンとの接触で瞬時に交換反応が起こるとのこと。皮膚表面の皮脂や老廃物などは陽イオンに属しているのでそれらがクレイに吸着されると考えられるのではなかろうか?

 ちなみに、吸収性はイライト(グリーンクレイ>レッド&イエロークレイ)、モンモリオナイト、カオリン(ホワイトクレイ)の順に富んでおり、吸着性は、モンモリオナイト、イライト(グリーンクレイ>レッド&イエロークレイ)、カオリン(ホワイトクレイ)の順となっているとのことだ。
体積を吸収性の違いとしてあらわした模式図です。 体積を吸着性の違いとしてあらわした模式図です。

 2回目講習会は、イエロークレイ、ホワイトクレイ、ピンククレイ、モンモリオナイトについて、クレイとアロマテラピー、フィトテラピーとの併用について、実習をたくさん交えながら行われた。

 イエロークレイは、モンモリオナイトは13%、カオリナイトは12%の含有量で、鉄(Fe)が多く含まれれ、アルミニウム(Al)はレッドに比べると少ないそうだ。水の吸収が遅く、水を吸収したあと触るとザラザラした感覚になり、そのザラザラはモンモリオナイトらしい。そして、毛穴の汚れを落としたりするにはよいが、逆に傷つけるおそれもあるとのこと。

 今回はイエロークレイ(大5)水(大4)の割合でパックが作られた。

 イエロークレイは敏感な肌によく使われ、荒れた肌、痛んだ肌、トラブルのある肌の深部から新陳代謝を促すとされる。

会場の様子

 ホワイトクレイ(カオリナイト)。このクレイはボディパウダー、フェイスパウダーがわりに使用することができる。フランスではアンチエイジングのための欠かせないアイテムだそうだ。 実習ではホワイトクレイ(大5)水(大3)の割合だった。これも手の甲にのせて15分くらい置きふき取ったが、パック後は肌がひんやりしていると感じる程度であった。

 次にピンククレイ。ピンククレイ(大5)水(大3)の割合で作った。この、ピンククレイは自然界では存在せず、ホワイトクレイとレッドクレイでできたものである。ホワイトクレイのやわらかさとレッドクレイの鉄分とが混ざり合い敏感肌の日常のお手入れに良いそうだ。

モンモリオナイトの実演

 モンモリオナイトは、吸着力、膨潤力に優れている。スメクタイト族に分類されている。調べてみるとスメクタイトは、「汚れを取る」という語のラテン語smecticusから由来してつくられたそうだ。スメクタイト系粘土は、強い吸着性をもって、石けん代わりに使用されていたこともあったそうだ。カルシウム、マグネシウム、ミネラルを含んでいるとのこと。グリーンクレイよりも、薄い緑色をしている。また、膨潤(swelling)とは、固体物質が液体を取り込んで体積が増大する現象で、結晶の層間に水や有機溶媒などが入って底面間隔が広がる(膨張:expansion)ことが起因しているようだ。今回は、モンモリオナイト(大5)水(大5強)の割合とした。

ドミニク先生

 休憩を挟み、クレイとフィトテラピー、アロマテラピーについての講義が始まった。

 クレイは単独で使用しても十分効果があるが、薬草、ハーブティー、フローラルウォーターなどを一緒に使用してもよく、相乗効果が得られるそうだ。今回、ドミニク先生が準備してくださったのはハーブティーのローズマリー(痒みの防止?)、リンデン(鎮静効果)、マシュマロウその他、市販のゲル(クレイの乾燥を防ぐ)、ホワイトニングクリームなどにクレイを混ぜての実習が行われた。また、数種類の精油入り植物油をクレイペーストに混ぜパックを作った。ラベンダー(Lavandula officinalis)、ヘリクリサム(Helichrysum angustifolium)、ゼラニウム(Pelargonium graveolens)をセントジョンズワート油、マカダミアナッツ油にまぜる。これをクレイペーストに3,4滴いれた。日焼け止めのためのレシピのひとつである。
治癒したブルリ潰瘍(この画像はクレイを用いた症例ではない。こちらを参照)

 講義の最後にはアフリカ、コートジボアールの診療所で実際にクレイを使用して治療が行われている例が紹介された。(いずれのページも衝撃的画像が多いのでご注意下さい

 熱帯地方などでみられる皮膚病変であるブルリ潰瘍(Buruli Ulcer)の治療としてクレイが用いられていたのである。 ブルリ潰瘍は2002年から「国境なき医師団」と「世界保健機構(WHO)」「エマウス・スイス(NGO)」らの共同プロジェクトでカメルーンにおいて治療プロジェクトが行われている難病である。講習会の中で紹介されたコートジボワールの例では52才の女性がブルリ潰瘍になり2001年4月からクレイを使用した治療を受けている。その経過の写真を数枚見せていただいた。そこではグリーンクレイを使用しているそうだ。28日後、42日後、54日後、64日後、78日後、94日後と経過をおって写真をみせていただいたが、明らかに傷口の縮小が伺えた。

 ブルリ潰瘍についてのちに調べてみたところ、マイコバクテリア(mycobacterium ulcerans)によって皮膚の腫張と潰瘍病巣を生じる病気で、原因などもわかっていないのが現状であり、有効な治療法もまだなく、病巣部位を取り除くほかない。とされている。ではなぜ、クレイを使用することによって傷口の縮小がみられたのか。クレイはもしかすると患者の線維芽細胞を阻害する毒素(マイコラクトン(mycolactone)などが研究されている)を吸着し傷害組織のさらなる破壊をとどめ人体の組織の修復を助け、他の細菌から患者を守っているのかもしれない。と感じた。

ここででてくるマイコラクトンはポリケタイド(Poryketide)化合物の一つであり、製薬会社においてはマクロライド系抗生物質などとして重要視されているようだ。

 クレイを使用した治療による報告をWHOへだしたが「結果として興味はある」との返答だったらしい。クレイが本当に有効であるならば、もっともっと可能性を研究し、臨床を積み重ね、より効果的に使える環境が整えばいいな。と感じた。

当院でも販売しているクレイ

 

 クレイ講習会を終えてみて

 クレイの講習会に参加させていただいて、一番に感じたことは奥が深いなぁということ。クレイを鉱物学の視点でみると自分にはわからないことばかりで、実際に美容、医療の分野での研究はまだまだ進んでいないようだ。クレイパックをすると、肌がきれいになり、しっとりするように感じられるのは確かなので、私自身は気に入って使用していた商品だが、講習会を通して様々な他の有効な使い方があることがわかった。今回講義の中ではあまり触れられなかったがドミニク先生はクレイを水に溶いて飲用していたり、フランスでも日常的にそのようなことが行われているらしく、日本に比べ日々の生活に密着しているようだった。わたしは、クレイを使い始めてまだ半年、これから使い続けるうちに良い点、疑問点と出てくると思うが、そのことを体験しながら興味を持って調べていきたい。          以上

2004年10月20日作成

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