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17th June.2004

競輪の新藤敦選手のトレーニングを見学してきました。

レポート:長谷川 冴子(鍼灸マッサージ師・大磯治療院所属)

「藤沢市湘南台病院健康増進施設"ライフ・メディカルフィットネス」にて
競輪選手である新藤敦選手が昨年3月より定期的に行っているトレーニング(トップアスリートのための特別コース)を見学させて頂いた。日頃からレースをテレビで見たり、競輪場で見たりはしていたが、選手のトレーニングを実際に見学させてもらえたことは、とても勉強になる出来事だった。

〜いよいよ見学に〜
大磯から自動車で1時間半、湘南台病院の隣にあり、施設内も清潔で好印象である。トレーナーの方々も明るく元気よく親切だった。そこではスポーツドクター、トレーナー、栄養士の方達が一丸となってアスリートの目的にあったよりよいトレーニングが行われていた。アスリートのための特別コースの他にも自由にトレーニング&リラクゼーションを行えるコースや、生活習慣病、腰痛、膝痛などの改善コースも主治医の指示のもとで行われている。「スイミング・スタジオプログラム・ジムトレーニング・スカッシュを個人の体力や目的に合わせ、運動メニューを組み合わせて楽しめる」とのこと。

新藤敦選手の当フィットネスでの目的は「瞬発的な力をつけること」。ライフメディカルフィットネス・トレーナーの堀口さんに「新藤選手を担当されていてトレーニングで重きを置いている所は?」と伺ったところ、「新藤選手のケガ予防(腰痛予防)のため、体幹の筋力をつけるトレーニングを意識して行っている」とのこと。現在トレーニングする筋群を分けてそれぞれ違う日にトレーニングする方法を実施、上半身と下半身を別の日にトレーニングしている。本日は上半身のトレーニングの予定であった。選手のトレーニングメニューは2ヶ月に1回ぐらいのペースで変化をつけ、選手の目的、目標に沿える様にしているそう。競技時間や動きの特徴等を把握した上でのメニューが作成され、ケガをしにくい身体を作ること、パフォーマンスの向上が重要視されている。選手のトレーニングの記録を把握し、的確なアドバイスがされている様子だった。

個別ストレッチの対象筋
腹直筋腹斜筋 三角筋肩甲棘部 上腕三頭筋・広背筋・大円筋
脊柱起立筋 大胸筋 前腕屈筋群
外側ハムストリングス(大殿筋・腓腹筋・ヒラメ筋) 内転筋群(恥骨筋・大・長・短内転筋) 大腿四頭筋
大殿筋(双子筋・中殿筋) 殿筋(中殿筋・小殿筋) ヒラメ筋
トレーニング前には入念なストレッチングから
到着してからロッカールームのカギを受けとり、更衣をすませた後心拍数、血圧を測定し、シートに記載する。バイタルのチェックはトレーニングにおいても必須である。トレーナーに挨拶をした後、広めのマットスペースで個人的にストレッチを行う時間を設けてある。新藤選手は黙々と個人ストレッチを行っていく。普段マッサージにお越しになるときとは違い、真剣な表情であった。ウォームアップを兼ねたストレッチでは筋伸張をしすぎない様、心地よいストレッチ度を目安に行う。約15分程度ではあるが、重要なポイントであるだろう。

ペアを組んでのストレッチ
トレーナー(後ほど紹介、堀口トレーナー)が笑顔で登場し、ペアを組んでのストレッチに入る。ストレッチでは対象筋がストレッチできる様、微妙な調節がされているところが目についた。ストレッチは下腿三頭筋、内外側ハムストリングス、内転筋群、殿筋(写真下)、起立筋などを行っている。写真は大腿四頭筋ストレッチ。股関節の内外旋を避けるため、大転子の後面を支えている。さらに殿筋の緊張に注意をはらい、緊張していれば「力を抜いて」とアドバイスしながら行っている。

殿筋のストレッチ


マットに肩甲骨を固定し、体幹回旋を制御しながら殿筋のストレッチを行う。股関節の屈曲を調整し、中殿筋、梨状筋、大殿筋へもアプローチできる。

殿筋のストレッチ
左の写真は仙部の腰背腱膜、殿筋起始部と中殿筋のストレッチ。トレーナーの胸に足底を当てていることで下部腰椎を骨盤ごとベッド面から浮かせることが出来る。その他様々な筋へのアプローチが行われていた。
腰痛の予防のための腹直筋トレーニング1〜リバースクランチ〜
新藤選手のウィークポイントは腰痛の発生である。それまでのトレーニングは自転車が中心で、ウェイト、マシントレーニングは少なめであった。四頭筋、ハムストリングスの筋力増加、筋肥大の結果、上半身の筋力がアンバランスとなり、腹圧をかけながら踏むことが出来ず、骨盤が前屈方向へ傾き、練習中の「もがき(一定の回転から最大出力の回転に移行するこぎ方)」開始時に腰痛が発生することが多かった。現在のトレーニングメニューで腹筋力を高める様になってからは腰痛の発生頻度が著しく減少している。この方法は股関節を90度屈曲から床ぎりぎりまで伸展し、トレーナーが腹直筋を意識する様、腹部を圧迫していく(回数、インターバルなどは公開できません)。
腰痛の予防のための腹直筋トレーニング2
この肢位はクランチではなく、さらに起立筋、腹直筋、ハムスト、広背筋の複合運動。腰部がマット上にあり、その肢位から下肢を蹴り上げ、胸背部までマットから浮かせる様にしてから戻す運動をスピーディに行う。心拍数が上がる、厳しいトレーニングである。セットごとのインターバルでも呼吸数が上がっているのがわかる。
メディシンボールを用いたフレキシビリティ・エクササイズ
マットからベンチに移動し、メディシンボール(2kg)を利用したフレキシビリティ・エクササイズを行う新藤選手。坐位で下肢を持ち上げることにより腹直筋を収縮させ、その肢位でバランスを取りながら体幹の回旋を行う。腹直筋、腹斜筋、大腿直筋、バランスのトレーニングを実現する方法。トレーニングには緩急を織り交ぜた回旋を取り入れ、腹斜筋への負担度をコントロールしている。
足部を固定したロシアンツイスト
マットにうつり、メディシンボールではなく5kgのダンベルバラストを胸に抱き込んでのロシアンツイスト。回転軸により近い部位にバラストを抱えるため、回転数を上げることが出来る。そのため下半身のぶれを押さえるためにトレーナーが足部、下腿をしっかりと固定する。かなりのピッチで行い、インターバル時には完全に仰向けになり息も絶え絶えになる新藤選手の姿が。
マット面での広背筋、下後鋸筋、腰部腸肋筋トレーニング
マット上で骨盤付近を軸にした背部の体幹回旋筋のトレーニング。この肢位で両上肢を外転固定していれば、大胸筋の肋骨部の繊維も緊張を維持することとなる。三角筋も緊張を強いられるし、体幹の伸展で起立筋も緊張を保持しなければならない。酸素要求度の高い運動。終了後の瞬間心拍数は150/min程度まで上がっていた。
ベンチプレス
パワーバンドを巻いて行うベンチプレス。20kgからスタートし、マックスでも75kg程度にとどめているプッシュ回数は75kgからはインターバルごとに回数を減らし、無理をさせない。トレーナーはバランスに注意しサポートしていた。
チンニング
自重の思い選手にはきついといわれているチンニング。新藤選手も下肢重量が重いことからチンニングでは苦労していた。スパンを長く取り、僧帽筋、広背筋への負荷を高めている。
オルタネイト・チューブプル
ラテックスチューブを用いたオルタネイトプルトレーニング。こちらは体幹を振らずに上肢周りの筋力を用いたトレーニングになる様心がける。上腕の筋力を用いて自転車をこぐ際の体幹のぶれを押さえるのに必要なトレーニング。

クールダウンを兼ねストレッチポールを
筋力トレーニングは終了。これからは終了後ストレッチングを行う。ストレッチポールを用いて体幹の正中から開く様にストレッチを加える。背部の起立筋には体幹を揺することによりストレッチ効果以外にも刺激効果があると選手間では評判になったグッズでもある。

呼吸の調整と共にストレッチを行うことも重要。リラクセーションストレッチとでも呼ぶべきか。大きな呼吸リズムに合わせ、身体を揺すったり、上肢を運動させたりしながら、各部位をほぐしていく。

今日はこれで終了・・
トレーニングは本日はこれで終了。約1時間半のトレーニングであった。トレーニング個別指導の他に、新藤選手は食生活をベースに栄養指導も受け、プロテインの摂取を行っている。選手の奥様の協力により、食事の記録を細かく作成し、それに対し調理法などのきめ細やかなアドバイスがされていた。トレーニングを行うことでモチベーションを維持し、一流を続けることは大変なのだと思う。新藤選手の飽くなき情熱と努力、ご家族の支え、まさに選手の身の回りのすべての人たちの協力をもとにそれを維持していると感じた。今回指導を見学させて頂いた、トレーナーを務めて下さった堀口さん、佐野さん(当日は遠征でお目にかかれなかった)をはじめライフメディカルフィットネスの皆さんにも感謝したい。選手のトレーニングなどについて学ぶことは患者さん、選手の身体を見る私たちにとって非常に重要であると感じた。またチャンスがあれば再びトレーニング見学に伺いたいと思う。

(以上、院長加筆部分有り。)

おまけ〜私もやってみました・・・
私もベンチプレスには挑戦しました。20kg・・・。左右の上肢、上肢帯筋のバランスが違うのでまっすぐにあげられないし、おろせない・・・(尚、院長先生も50kgのベンチでバランスを崩しておりました・・笑い)。鍼、きゅう、マッサージ、アロママッサージなど、学ぶことはたくさんありますがこれからもがんばります。 長谷川 冴子


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