〜急性胃炎に関わるアロマテラピー処方論に関する考察〜 |
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2000年6月20日 東京にて 報告 Therapist Guild Japan 主宰 長谷川 尚哉 急性胃炎は各種の原因によっておこる胃壁、特に胃粘膜の炎症過程である。原則として、短期間の経過で治癒し、慢性化しない。胃の粘膜に浮腫や多数の出血が見られ浅い欠損が多数見られるとされる。これまで様々な文献がアロマテラピーにおける胃の症状に対する精油選択を著しているが、その作用機序は明らかでない。当Therapist Guild Japanでは精油の分析表を考慮し、検討した。 ○胃炎の分類 アロマテラピーにおける胃炎の対象領域は胃炎の分類(表1)の内、急性単純性胃炎となることが予想される。急性胃炎はイ)急性外因性胃炎、ロ)急性内因性胃炎に分類される。急性外因性胃炎の内、a)急性単純性胃炎以外のものb)急性腐食性胃炎、c)放射線性胃炎では緊急を要する場合があること、医療機関での発生の可能性があることなどから、医療機関での加療が基本となる。またロ)急性内因性胃炎の急性感染性胃炎(中毒性)、急性化膿性胃炎、アレルギー性胃炎なども家庭医療の現場ではとうてい太刀打ちできない事が予想され(法定伝染病の可能性すらある)、我々が出来うる範囲は急性単純性胃炎ということになるだろう。しかしながら、医療機関において医師が処方する医薬品の効果を検討すれば、その代用品としてアロマテラピー精油が活躍する可能性が検討できるかも知れないと考える。 ○急性単純性胃炎の原因 急性単純性胃炎の原因は「食事(量・内容・温度)の不摂生によるもの」があげられており、これらは日常我々が遭遇する症状の原因となり得るものである。これらに対し薬物療法としては対症療法的に鎮痙剤、制酸剤、粘膜保護剤、鎮静剤が考慮されているが、アロマテラピーでの精油の成分的解釈として、フランスではα-フェランドレン、カルボンなど、メチルカビコール、メントールなどをリストしており、それらを含む精油の組み合わせが行われている。 ○急性単純性胃炎の症状 急性単純性胃炎の症状としては「食欲不振、上腹部不快感、胃部圧迫感、腹部膨満感、腹痛、口渇、悪心嘔吐、胸焼け」などがリストされている。胃痛の発生機序の中で潰瘍性など組織損傷が激しいものなどは医療機関での受診が最重要であるが、それら以外のもので比較的軽度と考えられるものから利用し、臨床事例の蓄積をはかることが必要である。 ○症状へのアプローチ 胃痛などにおける内臓平滑筋の痙攣痛は患者にとって耐えられないものであることが予想される。効果の早いとされている漢方薬、アロマテラピーなどは通常の西洋医薬の剤型ではなく、比較的消化管粘膜への速やかな吸着、吸収が期待できると考える。症状の大部分である消化管の痙攣痛などにこれまで利用して効果が早かったものにOcimum basilicum L.がある。Ocimum basilicum L.はHEBBDではlot No.41/0196-4/72、114/0197-1/72114/0298-2/7241/0299-5/72、114/0899-3/72の5種が輸入されており、それぞれ約85%のメチルカビコールを含んでいる。メチルカビコールは漢方薬理学ではエストラゴールとも呼ばれ、消化管痙攣を緩和することがいわれている。フランスでもそのようなことから利用されているのかも知れない。単独での使用も可能と考えるが、フランスよりのレシピのを解析することも必要であるとの観点から、今回はそれらを含んだレシピの合計量をモノテルペンなどグループにより分類した集計を行った。 ○Ocimum basilicum L.(バジル)の集計 Ocimum basilicum L.はモノテルペン、オキサイド、モノテルペノール、ケトン、エーテル、エステル、セスキ/ジテルペン/アズレン、アルデヒド、セスキテルペノールを含み、フェノール系の化合物は検出されていない。このうち85%がエーテルのグループである「メチルカビコール」であり、その他はモノテルペン2,68から3,66%、オキサイド1.18から2.6%、セスキテルペン0,82から3,59%であり、その他は1%未満であった。バランスで考えれば突出したエーテル型精油であると言える。 ○Mentha piperita L.(ペパーミント)の集計 Mentha piperita L.は我が国では比較的多く流通している精油であり、HEBBDではlot No.50/0996-5/67、58/1092-3/67、107/0997-1/67,31/0197-4/67,80/1097-2/67,66/1198-6/67,lot No.66/0598-5/67,107/0998-2/67.107/0198-1/67.66/0799-7/67.16/0199-3/67.の11に及ぶlot No.の精油が販売された。これらの構成成分も重要だが、これらlot No.には産地のことなるものが存在していることを理解しておかなければならない。産地はアメリカ産1例、フランス産7例、インド産2例、不明1例であった。メントールが特徴成分と考えることが出来るが、メントール量は最少32.5〜最大49.69、モノテルペノール計では38.09〜58.14、とばらつきが多く、メントンも15.48〜28,0、ケトン計も19.59〜39.82とばらつきが多かった。当然ではあるがメントンの多いlot No.はメントールが少ない傾向となっている。Mentha piperita L.はケトン、モノテルペノールの合計でほぼ80%となる精油であることがわかった 。
○Citrus limonum(レモン)の集計 Citrus limonumもMentha piperita L.同様多くのlot No.が国内で流通している。産地も種類が多く、シシリー産6種、イタリー産3種、エジプト産、フランス産、南アフリカ産各1種となっている。
モノテルペン類の合計で92.6%から98,26%とほとんどがモノテルペン類であり、その他にはモノテルペノール、アルデヒド、エステル、セスキテルペン、クマリンなどである。シトラール類はCitrus limonumの香りを決定づける少量成分であるが1,8%から2,61%含有していることがわかった。南アフリカ産、フランス産が比較的シトラール量が少なく、シシリー、イタリア産は2.3%程度の含有を示した。この精油もモノテルペンに突出して偏る精油であると言える。 Anethum graveolens(ディル)の集計 Anethum graveolensでは6種のlot No.が流通している。
ゴエブの著書によればジュラ県の植物を利用することになっている。しかし、98,99年ではジュラ県ではなく、スイス、ハンガリーの精油が流通している。特徴成分であるαフェランドレンはハンガリー産が23,8%と少なく、その他は最低26,9、最高は41,8%にもなる。また相応してd-カルボンはハンガリー産は多く(31,5%)、その他は10,04から26%となった。この精油では産地による構成成分の違いを考慮すべきであると考えられる。 レシピの集計 各々の精油から96年産のlot No.を抽出し、I.A.Rのレシピの集計を計算したものがある。平均値はモノテルペン35,46%、モノテルペノール5,74%フェノール0,アルデヒド0,71%、ケトン10,24%、オキサイド1%、エステル0,7%、エーテル38,25%、セスキテルペン4,55%、セスキテルペノール0,21%、セスキテルペンオキサイド0,05%となった。 これらの混合物から1回40mgをカプセル状にし、食間に服用するのがプロトコルとなる。痛みの度合いに応じ量は修正することとなっている。 ※講演時間3時間、集計資料、植物学などレポートを含む。
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