2000-12-07 7:せんこうど〜ですか?


こんばんは。 今日は旋光度の話です。

 先公どうした?ではありません。 おーさむっ。学校の非常勤講師をやっているとそんな つまらない「つかみ」を入れないと始まりません、、

 さて、気分を変えてっと。 旋光度?聞き慣れない呼び名ですよね。光がまわる? どんな意味でしょう?
で、有機化学の歴史。 何しろ昔の話です。時は1874年。アムステルダム大学 のヤコブスヴァンホッフ(1901年ノーベル賞)、 フランスのヨセフ・ル・ベルが言いだしたはなし。
彼らは独自にある分子(マンデル酸)の構造模型を作り、 その組み合わせが鏡のこっちと向こうの関係になる2種 存在するということを言い出しました。で、これを見ながら 皆さんは両手のひらを向かい合うように机の上に置いて下さい。 10センチぐらい離してね。その真ん中に鏡があるとすると 右手の鏡像は左手に見えるハズ。左手も同じですね。 それが分子構造の話だとすると、炭素の4つの手のうち 二つが炭素とつながっていれば残りの二つ以外は同じですね。 しかし、残りの手に一つは酸素、一つは水素がつながっていれば 右なの?左なの?となるわけです。

組み合わせは2種類ですね。 一つを組み合わせると鏡に映った反対側の組み合わせも存在 するって訳。そんな関係を「キラリティ」と呼びました。 で、キラリティを持つ分子は2種類あって鏡に映すと お互いの相手を映す関係ですね。

これがなんなの?
それがね、大切なの。

「キラルな奴」(キラリティを 持つものをそう呼ぶ)には技がある。その技が旋光度 な訳です。
「せんこうどー?」と生徒一同頭に??が 点灯。キラルな分子の溶液は偏光面を回転させるのです。
どれくらい回転させるの?というとそれは分子によって 様々。
でもその前に、その技の名前を、、「光学活性」 と呼びます。光学活性がある奴らはみんなキラルな奴なわけ。 で、世界的な約束が出来ました。偏光面を右に回旋させる分子 を「右旋性」、左なら「左旋性」と呼びます。これにはマークが 国際的に決められています。右旋性はd または(+)、 左旋性は l または(−)をつけましょう。というもの。 その角度が旋光度というわけ。 皆さんの知っている記号が出てきましたねえ。
ペパーミントの精油は何を含んでいますか?答えは メントールですね。でもその手前に何かついてない? そう、l メントール(エルメントール)、エルがついてる。 そうするとこれは偏光面を左に回す性質があるのだな? と考えて正解。しかしそこからが問題。精油には様々な 成分が入っていますよね。構造上アキラル(キラルではない) 物質がすべてならl メントールの旋光度が反映されるでしょう。
しかしそうも行かなく、多くの物質がキラリティなので 精油はその成分の比率で精油自体の旋光度を変化させるものなのです。 ここまで読むと「なんだ、大したことないジャン、先生」となる。 しかし!植物はその種によって大体作り出す成分の光学異性体 のバランスを決めているのです。
ペパーミントはl メントール をほとんど作り出すけど dメントールは少ししか作らないのです。そうすると大体ペパーミント の精油の旋光度は一定になりそうですね。 でもね、化学者達はある物質を自らの手で合成したかった訳です。 合成が成功したら、こんな事が分かってきた。 d体、l体が 半分づつ出来るなこれは、、、そうするとメントールに至っては 香りが全然違う!!l メントール以外は「カビ臭っ」だったりし たわけです。じゃあ、合成品で「ハッカの香り」は作れない じゃない。そこで!!「光学異性体分離」という裏技を作りました。 しかし一度作ったものにもう一度手を加えなければならない。 それじゃあ高くなっちゃって、畑でとれるのを待った方が安上がり、 しかし、物質の中にはl体は香るのに、 d体は香らない(または 香りが弱い)というものもあるのです。

 ちょっと話がとぶんだが、精油を作るために畑で1年待ちました。 精油を取ったらこれだけとれました。もう少しとれたら良かったのにね、 となったとき、ある会社のセールスマンが来てこういったそうな。 「この商品を加えたら香りは同じで量が増えますよ」 畑の主は考えました。「そりゃええわい」というわけで 魔法の油を買ったそうな。そして「天然香料100%」と販売。 お城を買ったとか買わないとか。
 精油は天然物ですから合成物(キラル50/50のもの)を添加すれば その精油自体の旋光度は変化します。天然物であることの 評価は難しいですが、天然物の香料にも一定の規格がちゃんと あるわけ。フランスならAFNOR等という工業規格書。 趣味が高じてフランスから購入しました。そしたら書いてある。 ある精油は「大体このくらいの旋光度でないとダメーっ。」 そんなわけです。

つまり、旋光度が一定の値の範囲に収まらなければ 天然物か?混ぜものか?合成物か?が分かる可能性があるって事。 そんなわけでうちで扱っている精油はその範囲内なんだ、ということも 分かって安心したわけです。
皆さんご自分の持っている精油の 分析表を請求してみて下さい。

分析表は取ってない、とか あるけどださないとかいうようなら、私にご連絡を、。 とりあえずAFNORのデータと比べて見ましょう。 安すぎる精油もね。何をつかまされているか分からない現実。
そろそろ消費者が賢くならなけりゃ。

長くなりました。ではまた


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