2001-11-07 14:セントジョンズワートとワーファリンとマッサージ!


みなさま こんにちは。
久しぶりの登場です。
と、いうのはご質問を頂いたからなのです・・・

ご質問はこちら。


ワーファリンについて・・。
ご存知のようにワーファリンとセントジョンズワートは禁忌事項になっています。 しかし、実際、ワーファリンは血行をよくする、というか血液を固まりにくくするもので、 マッサージ自体を受けることに関してはどうなんでしょうか? しかし、マッサージ自体、すでに血行を良くする働きがあります。 服薬中は怪我などしないようにする(血がとまりにくくなるから)という服薬上の 注意事項はあります。 たしかに、「血行」と「出血」は違いますけど。 精油を使用するとなると選択も慎重になると思います。 でも、ワーファリンに関する服薬注意事項(相互作用する薬剤・食品)を見てみると なんか、精油はどれにしても使わない方がいいような気がしてきて・・。

う〜ん、悩む気持ちも分からないではない・・だって安全性の情報はまだまだなんですもの。

で、Hypericum Perforatum(セントジョンズワート)は厚生労働省のホームページにも書いてあるが、ワーファリン(抗凝血剤)、インジナビル(抗HIV薬)、ジゴキシン(強心剤)、シクロスポリン(免疫抑制剤)、テオフィリン(気管拡張剤)、経口避妊薬などの効果を減少させる(ランセットなど医学情報誌に報告多数)、ということになっている。これは世界中でセントジョンズワートの健康食品が売れたことが原因のようですな。

「植物性に緩和に効く精神安定剤」「関節等の痛みをとる植物成分」などといった広告にのり、セントジョンズワートをのんだ(乾燥葉のカプセルなど)患者さんに変化があり、お医者様が調べたら・・・「これやばいんじゃない?」となったわけ。1999年あたりから報告が始まっている・・で、厚生労働省もコメントを載せたということですね。 それを読んで・・「あ〜アロマテラピーのセントジョンズワート」も危険なのね、と使うのをやめてしまう、、これも一つの道です。あながち間違いではないと思う。でも「なんで?だめなんだよ〜?」というところを掘り下げてみようというのが今回のソムリエ。 で、調べてみましたよ。セントジョンズワートは、「その使用法を限定はしていないが、さっきのお薬群の体の中での作用を短くしてしまう」ということらしい。

う〜ん。  どういうことなの?
ということで「薬物代謝学」のお話を・・・・

薬物代謝学(Drug metabolism)・・どんなもんじゃ?つまり、僕らの体は栄養素を取り込み、それを僕らが使いやすいもの(炭水化物なら単糖へ、タンパク質ならアミノ酸または再構築したタンパク質)にして利用している・・同じように体にとって毒性のあるもの(薬効として利用する場合もあるが)は体から早く排泄したい・・普通はアロマテラピーの世界では排泄は「呼気(息と一緒に出す)、糞便中、尿中」が大切なところ・・しかし、簡単に出ない成分もある、そこで薬物代謝学なのだ。薬物代謝はおおむね、酸化還元(酸化したり還元したりしてその成分の物性を変えてしまう・・それで無毒なものにする)、抱合(体の中で作った物質と結びつけて排泄しやすく、また無毒なものにする)、代謝酵素による無毒化(酵素反応をつかって分解したり、無毒化する)などがある。 薬物代謝は体の中でとても重要な働きをしているんです。そこで!今回はシトクロムP450という耳慣れない言葉が出てきたこれはね、鉄を含んだタンパク質で薬物代謝酵素のグループ名なんです。ここにはものすごく多くの「サブタイプ」がある・・・ あ〜わかんなくなっちゃったわ!!といわずに・・サブタイプはどんなんじゃ?というところ、これらの酵素群は薬物にとりついてその薬物を他のものに変化させる・・そうすると最初の薬物の人体への効果(対象となる器官、組織など)はなくなってしまう・・それがいくつかのお薬にはある一定のサブタイプが受け持っているんだよ、ということを知っていてほしいのです。ここでは(セントジョンズワートのはなし)、CYP3A4とCYP1A2 というサブタイプが問題となる・・・・・ さて、さっきのお薬達をのまなきゃならないのは何故か?それはね、患者さんが病気になっちゃったからなんだ。治したり、症状を抑えるために投薬されている。そんなお薬達も本来は「体がほしがっているものではない」よねえ。で体内に入ってくると「薬物代謝酵素の出番」となる。だからその薬物代謝酵素とお薬のバランスを考えて処方量が決まっているわけ。これはものすごく多くの動物実験、臨床治検などで決められたもの。お医者様の世界・・それがとても大切な治療法だからなのです。さて、それとは別口で健康食品の棚に置かれた「セントジョンズワート」の錠剤、カプセルに興味を持つ患者さんもいるわけですね。彼らがのまないとは言い切れない・・・で、もしも「セントジョンズワート」をのむとどうなるか?セントジョンズワートをのむことによって体の中で起こるのがさっきのCYP3A4とCYP1A2と呼ばれる「薬物代謝酵素」の誘導、つまりセントジョンズワートを服用すると、CYP3A4とCYP1A2の体内の量が増えてしまいますよということがとても大事。でも1回で急激な変化を起こすわけではないようだ。セントジョンズワート抽出物を300mg、1日3回、2週間継続したら、お薬(この報告ではインジナビル)の血中濃度が下がってしまった!どういうこと?それはねえ、インジナビルというお薬を無毒にする(と考えて)薬物代謝酵素がCYP3A4だからなのです。セントジョンズワートはCYP3A4とCYP1A2を体内で増加させる・・・インジナビルはCYP3A4で血中濃度が低下してしまう・・つまり効き目が低くなるじゃないですか。それは困った。それだけではない。血中濃度が低い状態が続くと、HIV感染者では「インジナビル耐性(お薬になれてしまうこと)」が発生する危険性があるのだそうです。だ・か・ら、併用はダメよ!というわけ。 ワーファリンについて では、ワーファリンは何?というところから(ここからが本題かな?)。 ワーファリンは「抗凝血薬」。抗凝血薬は血が固まりにくいようにするお薬。この様なお薬は「血栓症(静脈血栓、心筋梗塞、肺塞栓症、脳血栓症)」などに用いられるのです。 高齢者では使用している方も多い。そこで、このお薬とセントジョンズワートのことを考えよう!!セントジョンズワートはCYP3A4とCYP1A2を誘導するんだったよね。ワーファリンもCYP3A4とCYP1A2で代謝される・・・。つまり併用するとワーファリンの効果が少なくなっちゃうよ。ということ。そうなるとどうなるのか?つまり血が固まりやすくなる・・危険だよ!ということ。「血栓症」等では固まった(凝固した)血液の固まりが細い血管に詰まることで致命的になることすらある。ところでワーファリンの併用禁忌はセントジョンズワートだけではない。ビタミンKを含むもの・・納豆やクロレラなどですね。これらは血液を凝固させる時に必要なビタミン。したがって併用するとワーファリンの作用と拮抗してしまう。注意してね。実際あったことだが、納豆大好きなおじいさん、ずっと僕のところへいらしていて、数ヶ月たってから「いやあ、おれは健康のために納豆を毎日一パック食べてるんじゃ」とのたもうた・・・ワーファリンを利用していたのは知っていたので驚き!!お医者様へ伝えるように言った・・もちろん止められたが。 ___________________________ しかし、実際、ワーファリンは血行をよくする、というか血液を固まりにくくするもので、 マッサージ自体を受けることに関してはどうなんでしょうか? ___________________________ さて、ワーファリンを利用している方々にマッサージはどうか?というのもありましたね。 それについて考えよう。 マッサージでは血行を促進することは確かな様子。促進するから危険なのでは?というお気持ちはよ〜くわかる。 もちろんお医者様に確認を取ることが大切なのだが、確認の間もなくお越しになることも・・・そこで、考えてみる。 まずはそういった患者さんに「うんと強いマッサージを行うだろうか?」たぶんしないよねえ。患者さんに確認をおこない、ちゃんとお医者様の許可をもらってからにするか、短い時間にとどめるか?どちらかにしましょう。 今日は「セントジョンズワートとワーファリン」のお話でした。じゃあね〜。


ページトップに戻る   
"Copyright(C) Therapist Guild Japan."  アーカイブスへ